日本一の手袋の産地である香川県東かがわ市。
この産地では、自動車業界、家電業界、食品業界など、あらゆるものづくりの現場で使われる手袋も作られています。普段なかなか目にすることがない場面ではありますが、事実、手袋がないと作業は進められません。

いいものを作るには、いい道具を。
ものづくりが、さらにその先のものづくりを支えているのです。
そんなものづくりの現場で使われる手袋を東かがわで作り続けているのが、中田久吉商店です。

1955年にはじまった手袋生産の海外進出。その後も多くのメーカーが生産体制を海外へ移行してきましたが、中田久吉商店は、この地域で、ものづくりを続ける方法を何年も模索し続けてきました。

たどり着いたのは、“手袋の自動縫製ロボットの開発”。
あるコンピューターミシンにひらめきを覚えて、海外生産に負けない生産効率の可能性の追求が始まりました。
それが今から10年前です。

縫製商品の中でも手袋は、直線ラインが少なく、曲線が多い上に距離が短いことからも、縫製が最も難しいもののひとつと言われ、縫製工程の機械化構想を抱いた頃には、夢の話だと笑われ、相手にしてもらえなかったそうですが、描いたイメージの実現を信じ、諦めることなく追究し続けてきました。

数々の壁を乗り越え、試行錯誤しながら開発を進め、稼働に至ったのは約2年前。
完成型から逆算し、ロボットが走る(縫う)軌道を設計していきます。もともと手袋の縫製や構造を知り尽くしていたからこそ、どんな動きが必要とされるか熟知しており、それを機械化した、完全オリジナルの自動縫製ロボットとなったのです。

もちろん、人の手を必要とする工程もありますし、手袋の種類によっては人がほぼすべてを担うこともあります。
そして今もまだまだ革新の途中。次世代に適応した縫い方、作業効率、プログラム、型、素材の開発や改良など、日進月歩で進化しています。目指すべき姿が見えていれば、そこへ向かう今も軌道の一部。手袋の設計と同じです。

そんな同社の技術に着目し、素材にふんわりとボリュームのある今治タオルを使用したヘアドライグローブの企画を持ち込みました。
タオル生地は本来、手袋縫製には向いておらず、同社でも初めての試みでした。何度も試作を重ね、完成しました。
均一な縫い代としっかりとした縫製。よりフィット感のある仕上がりを目指し親指は手仕事で立体的に縫い付けました。中田久吉商店ならではの、自動縫製ロボットと手仕事のハイブリッドグローブは、まさにここでしか作れないものです。

日本のものづくりは、存続させるために海外から支えなければいけないときももちろんあり、いろいろなあり方があると思います。しかし、自分たちの知恵でものづくりのベースから変えてしまう方法を、信念を持って追い続ける姿は、これからの可能性のひとつであるような気がしました。