⇒前回までのお話

-ひっきりなしに注文を受ける日々から一転、電話が鳴らなくなったScherma(スケルマ)の工房-

電話を待ちながら、
“これで2度目の注文が来なければ、以前の手袋づくりに戻ろう”とお二人でお話をされたそうです。

しかし知人から、『細川さんの作る手袋は丈夫で長持ちだから、通常よりも交換のサイクルが長いはず。8か月~10か月で何らかのアクションがあるのではないか』と言われ、
じゃあそこまでは辛抱してみよう、と待ち続けました。

そうすると、その予言通りまた電話が鳴り始めたのです。
蓋をあけるとそのほとんどがリピーター。手袋の品質が認められた証でした。

今では高校だと47都道府県、ほぼすべての県において導入されており、ジュニアから、世界で戦うトップアスリートまで、ひっきりなしに注文を受けています。
フェンシング選手の中でSchermaの手袋を知らない人はいません。


Schermaのものづくり



Schermaでは、ご主人が設計とパーツの裁断を行い、奥様が縫製を担っています。
お話を聞いている間も、工房では奥様の踏むミシンがリズムよく響きます。

細川さんの手袋を使うと他のものには戻れないといいます。
立体構造と緻密な縫製による装着感が、細いグリップを握りしめるのに適しています。
さらにフェンシングではグリップにも様々な形があるので、指先が楽に曲げられ、フィットすることがとても重要です。

かつ、剣で突かれるので強度が必要です。
甲の部分には防弾チョッキなどにも使用されるような高強度の素材や、衝撃を吸収してくれるクッションのような素材を敷き詰めて縫い合わせていきます。
握りしめた指先がずれないように滑り止めや、力のかかる部分への補強パーツ、相手の剣が指の股から入ってくるようなケースにも備えたパーツごとの素材選び・・・。

Schermaの手袋は実に細かいところまで配慮されています。
種目によってさらに仕様が異なります。それぞれの種目特性を踏まえた繊細な配慮に驚きます。

さらに、選手一人ひとりがオーダーメイド。
試合会場へ赴いて販売するときは、1人1人、細川さんが直接手を測ってあげます。
それがかなわない場合はFAXで手のサイズを送ってもらい、それぞれに合った手袋を作成し、名前の刺繍を入れてあげて完成します。
初めてSchermaの手袋を着用してみたときの選手たちの第一声は『うわ!』『すごい!』この2語だけなのだと顔をほころばせながら教えてくださいました。

子どもたちが純粋に、ここをもっとこうしたい、もっとこうだったらいいのに、とまっすぐにぶつけてくる思いのその中に改良のヒントがたくさんあるそうです。
まだまだ研究中なんや、もっといいのができると思う、とおっしゃる細川さん。
ご自身がフェンシングをかじっていなかったからこそ、選手たちの声をストレートに受け止めることができ、それを表現する方法を愚直に探ることができたのだそうです。

直接選手の声に耳を傾け、常に細かなマイナーチェンジを積み重ねる細川さんの手袋を見るのを、いつも心待ちにしている方がたくさんいるのです。

Schermaには営業マンがいませんが、細川さんは作った手袋たちが営業をしてくれるといいます。真剣に作っているからこそ、口コミによって広がっていく・・・作った手袋がきちんとお客さんを呼んできてくれるのだと、ニコニコと笑います。

ものづくりにも、その先にいるお客さまにも愛情を惜しまない細川さんご夫妻の願いは、
“東京オリンピックで日本チームがメダルを獲得すること”。

あと3年後ですが、今からとても楽しみですね!
日本の選手たちが日本の技術に支えられ、世界と戦っていくのだと思うと本当に誇らしいです。

ここ東かがわが各国選手団の合宿地にもなるといいなあといいながらインタビューを終えました。
ありがとうございました!

photo:坂口祐(物語を届けるしごと)