
アーバン工芸株式会社のこと
2020.07.01
手袋の産地では、その長い歴史の中で“縫う”という技術を核に枝分かれし、発展したものづくりがさまざまな形で根付いています。
創業60年以上の歴史を持つアーバン工芸株式会社は、革手袋製造で創業しましたが、時代の流れに合わせて事業の柱を変化させながら、ものづくりを今へとつないでいるバッグメーカーです。バッグづくりをはじめて今年で45年目、現在は、手袋製造で培った技術を活かしたレザーバッグを中心に、すべて国内生産にこだわったものづくりをしています。
時代に合わせて主力製品を変えてこられた背景には、お客様からの頼まれごとを断らずに常に新しい視点をもって取り組んできたという歴史があります。
“頼まれごとは試されごと”とよく言いますが、新しいことを頼まれたときに、それまでにやったことのないようなことでもすぐに断ることはせず、柔軟な姿勢でチャレンジをするというのが創業時からアーバン工芸に根付いている精神です。
同時に、いつの時代もアーバン工芸がお客様をとても大切にしてきたことが窺えます。

そうした姿勢は、幅広い業種での実績にはじまり、圧倒的なサンプル経験数など、数字で見えることだけではなく、新たなチャレンジや変化に直面したときのチームの心構えに反映されています。
そのことが、細かな仕様注文や小ロットオーダーという一般的に効率が求められる製造業では敬遠されがちなオーダーひとつひとつに対して、確実にやりきる対応力、機動力の高さにつながっているのです。

アーバン工芸のバッグづくりでは、「このデザインではこうしたらもっと使いやすいのではないか」「もっとこうしたら美しく仕上がるのではないか」「製造面においてもスムーズなのではないか」という、「もっと」の気持ちで最善の道を探ることを意識しているそうです。
バッグには、決まった形がありません。手袋以上に大きさや形、構造など、幅は広く、可能性や打ち手が無数にあります。
だからこそ、経験によって蓄積されるたくさんの引き出しが重要ですが、知識の引き出しを必要に応じて出し入れしたりアップデートしたりできる作り手の心構えが何よりも大切になるのです。

アーバン工芸が生み出すバッグには、そんな心構えと手袋由来の高度な縫製技術が活かされています。
たとえば縫製の距離が合わせにくい柔らかな革も難なく縫い合わせることができ、また縫製の縫い代を浅く、正確に縫えるため、ずっしりと重くなりがちな仕様でも軽く仕上がると評判です。
柔らかな革の扱いは、手袋製造を原点としているために自然と受け継がれており、革を使ったパッチワークやコサージュなどの飾りづくりのような、手先が細かく繊細な手仕事も得意としています。

tet.では、まずはシンプルなつくりのバッグをオーダーしましたが、アーバン工芸が大切にするものづくりの精神や丁寧さを、やり取りの中で随所に感じ取ることができました。
日本には、事業承継のフェーズにさしかかっている中小企業は多く、ここ東かがわのものづくり産業においても状況は同じく、アーバン工芸もそのひとつです。
3代目となる常務取締役の内海公翔さんは、弟の成翔さんと一緒に、これまでアーバン工芸が歩んできた歴史の背景にあるものを体現するような自社ブランドを立ち上げ、ものづくりの魅力を伝えています。アーバン工芸の歴史にまた新たな1ページを刻む内海兄弟のチャレンジの今後も楽しみです。


アーバン工芸株式会社
〒760-2601 香川県東かがわ市三本松1135