平田商店のこと
2022.01.29
1971年に創業した平田商店は、初代の平田進さんご夫妻と、現2代目の平田哲也さんご夫妻がご家族で営む革手袋専業のメーカーです。
革手袋一筋で50年続く平田商店は、細かなリクエストや難しいパターンにも対応できる高い技術力で、国内外の有名ブランドのOEMから、個人のオーダーメイド手袋まで幅広く手がけ、お客様に寄り添う丁寧なものづくりを追求し続けています。
※OEMとは・・・相手先ブランドの製品を製造すること
もともと東かがわの手袋メーカーで職人として勤めていた進さんが独立をされたところから、平田商店の歴史は始まります。
独立当初は、革手袋の裁断を請け負う仕事がメインでしたが、丁寧な仕事が評判となり、やがて縫製も手がけるようになっていったといいます。
そして、生まれた時から手袋製造の家で育ち、両親の背中を見て育った哲也さんが2004年、30歳の時に加わりました。
傍で見てきたものづくりと、平田商店としてひとつひとつ積み上げてきたもの。
その道のりを思うと、絶やさずに引き継いでいきたいという想いが徐々に湧いてきたそうです。
それまで造船エンジニアとして働いていた会社を辞め、家業に入って手袋職人になる道を選びました。
革手袋は、羊や鹿、猪や牛など、天然ものの革を裁断するところからはじまりますが、生き物なので当然革1枚1枚に個体差があります。人の皮膚がひとりひとり違っているのと同じです。
さらに、革はたて、よこ、ななめに伸びる特性があり、その伸び方も厚さや部位によって均一ではないため、1枚1枚と向き合う必要があります。
生きていた証でもある傷や虫刺され跡なども避けたり、動きが細かい手に合わせた伸縮度合いを計算して、革の部位ごとに取るパーツを変えたりしながらの裁断は、一朝一夕で習得するのは難しい職人技。
加えて、縫製の工程においても、一度縫うと針穴が開いてしまう革は、縫い直しがきかないのが難しいところです。
そういったひとつひとつの熟練の技を、ご両親からしっかり時間をかけて学びながら、習得されました。
現在、2代目として平田商店を引き継いだ哲也さんは、
“技術はまだまだ100%には到達していない。吸収できるものはまだまだある。職人歴が65年を超える父も今なお、進化し続けていると思う。”
と語ります。
“手袋づくりは、思い描いたとおりに完成した時はやはり嬉しい、楽しいと思うけれど、それでも完璧にできたなという思うことはないかな。それを言ってしまえば進化が止まる気がして。もちろん、できた!と達成感を感じることはあるけど、それでもよくよく見ると、もうちょっとここをこう・・・など、まだできたことがあるんじゃないかと。常にもうちょっと、もっと、という気持ちを忘れずに探求を続けたいなと思う”。
と、常に謙虚な姿勢でものづくりに向き合います。
大切にしていることは丁寧にすること。
例えば、ちょっとしたカーブなど、勢いよく縫い進められる部分でも、スピードを落として一針一針を確実に丁寧に縫っていく。ひとつひとつの仕事を丁寧に。その細やかな気遣いの積み重ねが手袋の仕上がりに差が生み出します。
時には、数をこなすことも重要視される縫製業ですが、丁寧さと量産時の効率のバランスはどうジャッジされているのかを尋ねると、
“そのひと手間で変わるんだったら、丁寧を選ぶかな。仕上がりがきれいな方が絶対にいいと思うし。長い目で見たら、それが積み重なって信頼につながると思うから”と、穏やかに答えてくださいました。
そんな平田商店の手袋は、ここ手袋産地の手袋メーカーがこぞって褒めるというのが何よりの信頼の証。
同業だからこそ、いざ評価となると厳しい目が向けられることが多い中、皆が口を揃えてその丁寧な仕事を高く評価をしています。
テトでは、軽さとしなやかさが特徴のギリシャ産のラムレザーを使ったシンプルなレザー手袋をお願いしました。手の入れやすさと、着用した時の美しさのギリギリのラインを細かく相談し、シンプルだからこそ細部の丁寧な仕事が光る、そんな手袋ができました。
平田商店
〒769-2701 香川県東かがわ市湊516