商品の開発において大切にしていること
2024.08.31
ブランドを運営していると、このような質問を頂くことがあります。
“サステナビリティについてはどのように考えていますか?取り組みとしてはどのようなことをしていますか?”
ここ数年、着実に増えた実感があり、ことファッションの分野では、購入動機のひとつになるくらい、注目度の高いテーマになってきていると感じると同時に、一方で言葉だけが独り歩きしてしまって、言葉そのものが消費されてしまっているんじゃないか、と感じる場面さえあります。
これまでは、こうして公に伝えることはあまりしてこなかったのですが、たまに聞かれることなので、知りたいと思っている方がいらっしゃるかも・・・?ということで、サステナブルどうこうというのではなく、テトとして大切に考えていること、考えて実践していることをこの機会にお伝えできればと思います。
私たちはブランドの取り組みの中で、特に開発・生産の側面において大切にしていることが大きく3つあります。
①永く愛せるデザインを考えること
②愛着を持って使ってもらうこと、永く生活に寄り添えること
③生産における無駄を少しでも減らすこと
この3つについて、少し補足も交えながら説明をできればと思います。
①永く愛せるデザインを考えること
まずは商品を開発する際に、一時的な流行りによる開発をしないようにしています。
“なぜ作るのか。テトが作る意味は何なのか。”をチーム内でも問うようにしており、加えて、“来年も再来年もその先も、自信をもって届けられるかな?”とできる限り古くなりにくいものにできるように、意識をして開発をしています。
世の中には、あらゆるジャンルで不朽の名作がいくつもあり、及ばずながらも、私たちもそれらのようにできるだけ永く、色褪せないものを届けたいなと、そんな思いで取り組んでいます。
とはいえ、商品を生み出して販売している以上、選ばれなければ=売れなければそもそも繰り返し作り続けるということは難しいです。
今年売れなければセール(※)して売りつくしてしまえばいいか、来年作らなければいいか、という考えは持たず、自分たちとしても自信をもって届けられると思えるところまで、真剣に向き合い、商品を完成させることを大切にしています。
※素材の事情により期限があるもの、開発事情など、ケースバイケースのものもありますが、基本的にはセールをしていません。
最初からこのスタイルができていたわけではなく、最初は手探りの連続でした。
届ける役目である自分たち自身の認知不足、スキル不足、努力不足がゆえに、うまく届け切れなかった商品もあり、生まれてきた商品たちやものづくりの過程にいた方々に、申し訳なく、不甲斐ない気持ちになったことも多々あります。
規模の小さな私たち自身と、ものづくりのパートナーである工場さんたち、そしてブランドを支えてくれるお客様たちとの関係性の中で、いかにして持続可能なスタイルにできるか、その運営方法とは、と試行錯誤しながら歩んできた中で、これらの考えをベースに取り組むようになりました。
商品のラインナップ数は増えていますが、初年度から続く顔ぶれ、つまりずっと選んでいただいているロングセラー商品が多いのも事実です。
とはいえ、この先何年も全く変わらないでいいとは思っていません。
それはやり続けた先にしかわからないことで、変えなければいけないタイミングもあるだろうと思います。
続けた先に、変えた方がいいなと思うことが出てきたら、変えるべきときが訪れたら、ポジティブな変化は、どんどん受け入れてアップデートをしていきたいと思っています。
②愛着を持って使ってもらうこと
近年は、リサイクル素材への注目度も高く、“リサイクル素材など使ったものはないですか?”というご質問も頂きます。
テトでは現状、リサイクル素材だからという理由だけで使う選択はしていません。
私たちとしては、手袋というアイテム自体、日常の中でまだまだ主役になれてはいないのでは?という仮説のもと、まずは生活の中に手袋を取り入れる楽しみをお届けしたいと思っています。
よって、このデザインがすごく好き、この素材がとても気持ちいい、フィット感が最高、大切な人からプレゼントされたなど、手袋に対する感情や記憶を、より温度感のあるものにできるように、まず手袋を好きになってもらえるような作りを考えること、手に入れるきっかけの部分を大切にしています。
そういった気持ちの変化が、手袋そのものに愛着をもって、永くお使い頂くことにつながるのではないかと思っているからです。
感覚が繊細な手にそのまま着用する手袋において、素材選びはとても大切です。
だからこそ、やわらかさやしなやかさなど、肌触りは重視ポイントとしています。
そして、日常生活で頻繁に視界に入るのが手。見た目の部分でも気分があがることが大事だと思うので、風合いや佇まいなどの微調整にもこだわり、優先事項としています。
リサイクル素材だからという理由だけを起点に選ぶことはありませんが、いいと思った結果、リサイクル素材だった、ということはもちろんあります。
たとえば、リサイクルではないですが、ここ3年くらいは、レザーとツイードを組み合わせたコンビグローブには、日本でも随一の生地産地・尾州地区に眠るデッドストック生地を採用しています。
実際に産地に赴いてセレクトしていますが、生地そのものがこだわりぬかれて作られており、クオリティも仕上がりも素晴らしいものばかり。
これすごくいいよね!と自分たちとしても惚れ込んだものを使わせていただいている次第です。
こういったことを続けてくると実際、
“ひとめぼれをして買ったのに/大切な人からもらったのに、片手をなくしてしまい、片手だけでも買いたい”
という問い合わせもよくいただきますし、
(ちなみにブランドデビュー時の2016年から、左右の区別のないつくりをしているシリーズは片手販売対応をしています。)
使っていたら穴があいてしまったので修理はできないか、というお問い合わせもよくいただいています。
もちろんテトでは、修理もお受けしております。
状態によっては修理が難しいもの、有料になるものもありますが、できる限り永くお使いいただきたいので、相談を承っております。
腕のいい職人さんは修理も上手です。ぜひご相談ください。
“失くしちゃったけど/穴が空いちゃったけど、そんなに思い入れがあるものでもないからまあいいか”
と捨てられてしまうものにしない、大切に扱おうと思ってもらえるものを届けられているかどうかの視点を大切にしています。
現状はこうですが、ものづくりの時点においても、よりよい循環を生めるようなサイクルができたらとは思っており、他ものづくり産地の取り組みや新たな技術開発などにもアンテナを張り、手袋にもフィットするよりよい方法も模索したいと考えています。
③生産における無駄を少しでも減らすこと
テトが工場に発注する手袋は、テトオリジナルのデザインで、工場側から他の取引先に販売できるものではありません。
こういった取引の形では、例えば1つの商品について、300双の注文をした場合、一般的には、300双ぴったり納品することが求められるため、生産過程によって不良が出た場合に備えて、+αの余剰生産をすることが多くなっています。
不良率を何%と見込むかは、会社によって様々ですが、注文された商品をきっちり納品できるように、もしもの時に備えて、見えない部分で準備をしていただいていることがほとんどです。
でも、1つも不良が出なかった場合、余剰生産したものが世に出ることがありません。場合によっては処分されているのではないかと思います。
テトでは、こういった商品をできる限り減らせるように、あらかじめ工場とお話をして、できうる限り、減産OKの取り決めをしています。
減産というのは、300双をめがけてつくって、仮に5双の不良が出たとして295双になってもOKということです。
そうしておくことで、余剰を見越した材料手配の数量も少なく減らすことができるからです。
あるお取り組み工場では、毎年きっちり納品できるように余剰製品を作り続けた結果、数年分に置き換えると結構たまってしまっている、と相談を受けたことがありました。
そんな製造の裏の事情まで見えてなかった私たち。余っていた手袋は引き取って販売をしました。
それからは、減産OK、ときに増産もOKと商品や製造工程の性質などを踏まえて、あらかじめ取り決めをすることによって、生産時における無駄を極力減らせるように努めています。
(工場側の希望なども踏まえて、よりよい選択をできるように話しています。)
本当に些細な、ちょっとしたことではありますが、私たちとして、生み出される商品を大切にする姿勢を忘れないように、を心がけています。
長くなってしまいましたが、なにも正解があるわけではない中で、ものを作る人、届ける人、使う人、それぞれの関係性において、よりよいと思える循環がうまれていくように、よりよいと思える続き方ができるように、と考えながら私たちも日々試行錯誤をし、できる限りの努力を続けていきたいと思っています。