釜浅のデニムミトン

産地や分野も異なる異業種の方と取り組んだコラボレーション。 偶然のめぐり合わせでつながったご縁から、話は始まります。
岡山のワークウェア、東京・浅草の料理道具店、香川の手袋と地域や業種は違えど、共通するものは「良いものをつくり、お客様に届ける」という想い。
初めての試みである料理用のミトンづくりですが、プロから一般家庭まで幅広く愛されるような、機能性とデザインを兼ね備えた満足の商品に仕上がりました。

1.取り組みのキッカケ

きっかけは一足のスニーカー

ある日、お取引先のお店でかっこいいスニーカーを購入しました。
つま先が足袋型になっているスニーカーで、岡山で作られたものでした。その背景やこだわりをお店のバイヤーさんから聞いていると、なんとご友人が手掛けるブランドの商品とのこと。そのブランドは、エプロンやワークウェアなどの企画をプロデュースしていて、会話の流れで、“ひょっとしたらtet.と面白いことできるんじゃない?”となり、ご紹介頂くことになりました。

そんなきっかけで出会ったのが本企画を一緒に進行させていただいた、makerhoodの越智さんでした。
makerhoodは、日本が誇るデニムの聖地・岡山の老舗ジーンズメーカー、株式会社ジョンブルさんが手掛けるユニフォームレーベルです。

ご挨拶の連絡をするやいなや、舞い込んだ相談。実は、今までに何度か相談を受けていたけれど、相談先がわからず保留していた案件があるとのこと。

それが今回一緒に取り組んだ、東京は浅草合羽橋に本店を構える明治41年創業の老舗道具店「釜浅商店」さんの料理用の手袋でした。

一般人だけでなくプロの料理人にも愛用者が多い釜浅商店さんの料理道具ですが、それらの道具に見合うような機能性と、確かな耐久性を兼ね備えたエプロンやナイフロールのラインナップは、makerhoodさんとのコラボアイテム。
そこへ第3弾として、「料理の際に使用する、プロも使える耐熱ミトン」のコラボ企画が始まることとなりました。

2.開発中の話

ものづくりの現場を知るがこそ

手袋づくりにご協力いただいたのは作業用手袋づくりのプロフェッショナル「興和グローブ」さんです。
消防士向けなどの耐熱手袋はもちろん、以前、調理師学校向けのミトンを作られているお話を伺った記憶があったことから、ご相談させていただきました。

釜浅商店さんの調理器具の数々を写真で見てもらい、使うシーンをイメージしつつ、素材や構造のご提案をいただきながらサンプルへと進んでいきました。

メインに選ばれた耐熱素材であるテクノーラ®に続き、熱伝導性をもっと下げるために内側に仕込まれた特殊繊維ソンタラ。
これは、異物の混入が許されない医療現場、特に手術室での道具にも使用される低発塵の高機能不織布です。各種細菌をも通しにくいほどに繊維の絡み合いが非常に密な素材なので、断熱素材としても機能します。

それだけではなく、ほつれや糸くずを発生させることなく用途に応じた形に自由にカットできるという特長を併せ持つ、ここが採用の決め手でした。なぜなら、ほつれを起こしやすい織物であるデニム生地に貼り合わせることで、同時にほつれ止めにもなり強度アップにつながるからです。

手袋の内側で、手についてしまった糸くずが料理に混入しないように、もともと裁断面が手に触れない内縫いの仕様にしていましたが、さらに低発塵という素材を選ぶ徹底ぶりに驚きました。

まさに普段からものづくりの現場を支える手袋をつくり続け、使用シーンをイメージしながら手袋づくりに向き合う興和グローブさんならでは。
縫製の仕様書上では一言で済んでしまうような内容のひとつひとつすべてに、使う人のことを考えた意図があるのです。

3.できあがり

シンプルな見た目にぎゅっと詰まった高機能

完成した手袋は、その名も『釜浅のデニムミトン』。
ブラックデニムを使った、釜浅商店さんらしいカラーリングで、キッチンに置いておきたくなるような見た目も兼ね備えています。使い込むうちに風合いが出て、愛着を持ってお使いいただけるようにと、デニムを使用しています。

耐熱機能には、2種の機能繊維にプラスして綿のニット生地もはさみこみ、裏地も合わせて4層構造にすることで確かな断熱性を確保しました。

これだけの多層構造ですが、実物は想像以上に薄手で、操作性もばっちりです。厚手になりすぎると、握ったり掴んだりする作業がしづらいため、完成時の厚みも意識して設計しています。

手袋の内側では二股に分かれており、3本指型設計になっていることも作業を行いやすくしています。

ほつれ、糸くず、小さな塵まで配慮した特殊素材に、
生地の裁断面や縫い目が手に直接触れないオール内縫い仕様。
いずれもプロの料理人を意識して作られています。

“料理人向けだったら、耐熱は基本。ほつれや糸くずはもちろん、低発塵というところまで配慮して提案できないと素人よ。”とおっしゃる三好社長。

シンプルな見た目ながら、確かな機能性と、手袋づくりへのプライドを感じられる仕上がりとなりました!

4.今回ご協力
いただいた方々

ここには書ききれない試行錯誤が他にもたくさんありましたが、ものづくりへの愛情があふれる皆さんと一緒だったことで、完成まで楽しくお仕事をさせていただきました。ありがとうございました。

三好正雄さん(興和グローブ株式会社)
越智輝佳さん(makerhood/株式会社ジョンブル)
及川泰伸さん(makerhood/株式会社ジョンブル)
吾郷千鶴さん(makerhood/株式会社ジョンブル)
和田洋一さん(株式会社釜浅商店)
湯浅碧さん(株式会社釜浅商店)